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ヴァイオリン属の楽器
 ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの4つの楽器は形と構造がほぼ同じで、奏法や構造も共通点が多いので、まとめてヴァイオリン属と呼ばれています。音域はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの順で低くなります。

 ヴァイオリン  ヴィオラ  チェロ  コントラバス 
 

 ヴァイオリン
   ヴァイオリンは16世紀の初頭に発明され、最初はダンスや歌の伴奏に使われるような民衆の楽器でしたが、その優雅な音色が認められて宮廷のオーケストラに多く取り入れられました。それからは殆ど現在に至るまで大きな変化がありません。たったの500g程度しかない、鍵盤もフレットもないごく簡単な構造の木箱に弦を張っただけの楽器で、手に取ると、その軽さと単純な構造に驚くことでしょう。弓は弾力のある湾曲した木製の棒(スティック)に、馬の尾の毛が平たく張ってあり、この毛に松脂を塗って摩擦を強くし、これで弦の上をこすって音を出します。

 その音色は人間の声にとても近いと言われ、人の耳にもっともなじみやすく、長時間聴いても飽きない音を持っています。ごく小さい音から大きい音まで、音の強弱が自由自在で、早いパッセージも得意、音域も4オクターブ以上で広く、長く音を続けることもでき、また美しいビブラートも自由自在に表現できる、たいへん優秀な楽器です。

 弦楽器の中でもヴァイオリンはもっとも明るく華やかな音色を持っており、オーケストラでも主要なメロディを奏でることが多く、オーケストラの中心的な役割を担います。合奏では第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリンがありますが、楽器そのものは同じものです。第一ヴァイオリンは主に高音部を担当し、第二ヴァイオリンはヴィオラとともに内声部を担当します。

 ヴァイオリンには通常の大きさ(4/4)の他に、子供向けにサイズを小さくしたヴァイオリンも作られています。これらを分数楽器といいますが、種類は、1/16サイズから始まり、1/10、1/8、1/4、1/2、3/4、7/8サイズまで全部で7種類あります。(但し、これらの縮尺は飽くまでも便宜上のことで、実際の縮尺ではありません。)


 おもしろいのは、高品質なヴァイオリンは、年月を重ねるほどその性能や価値が上がってくるのが特徴です。ストラディヴァリウスなどの名器がなぜ素晴らしい音を出すのかと言うと、元々の製作精度の高さと経年変化による恩恵が大きいとされていますが、これらの音の違いがどうして生み出されるのかは、未だはっきりしない点が多くあります。 
 

 ヴィオラ
   ヴィオラはヴァイオリンとほぼ同じ構造ですが、低い音を出すために全体が大きくなっていて、特に厚みが増しています。大きさはヴァイオリンに比べ、胴の長さで5cmほど大きくなっています。ヴァイオリン同様、顎に挟んで演奏します

 現在の楽器をヴィオラと呼ぶようになったのは、18世紀に入ってからのことです。長い間、独奏楽器としてはほとんど無視された存在でしたが、近代以降では独奏曲も数多く作られるようになってきています。合奏やアンサンブルの中では第2ヴァイオリンなどとともに内声部を受け持ちます。

 
音域はヴァイオリンの5度低く、チェロより1オクターブ高く、通常はアルト記号で表記されます。ヴァイオリンとは対照的に、柔らかくあたたかい音色がヴィオラの魅力です。音量は豊かで男性的です。独奏と合奏の両面で、ヴァイオリンに次いで重要な楽器であり、合奏では全体の土台としての低音楽器の役割と、旋律を歌う役割とを兼ねます。

 ヴィオラにはヴァイオリンのような分数楽器(サイズを小さくした楽器)は存在しません。分数楽器が無いと言うことは、演奏を始める年齢はヴァイオリンよりも後になることが多く、身体が成長してからになります。従ってヴァイオリンから転向する奏者が多いのが特徴です。 
 

 チェロ
   今日のスタイルのチェロの形態が確立したのは18世紀以降のものであり、ヴァオリンより2世紀ほど後のことです。18世紀に入ると、ビバルディ、バッハ、ボッケリーニといった作曲家の登場によって多くの作品が書かれ、ヴァイオリンに並ぶほどの独奏楽器に発達しました。

 チェロはヴァイオリンやヴィオラとほぼ同じ構造ですが、低い音を出すために全体が大きくなっており、特に厚みが増している。弦も素材や基本構造は同じものの、太く丈夫に作られており、それに伴って弓もヴァイオリンなど太いが、長さは逆に短くなっている。チェロはその大きさと重さゆえにヴァイオリンやヴィオラのように、顎で挟み、手に持つことが困難なので、エンドピンを床に立てて演奏する。

 チェロはクラシック音楽において重要な楽器の一つであり、オーケストラによる合奏や、弦楽四重奏や弦楽五重奏、ピアノ三重奏といったアンサンブルの中では低音部を受け持つ。また独奏楽器としても重要であり、多くのチェロ協奏曲やチェロソナタが書かれている。

 チェロの音域はヴァイオリンより1オクターブと完全5度低く、ヴィオラより1オクターブ低い。その音域は人間の声に一番近い楽器といわれており、その音色は豊かな響きのある低音から、心地よい高音まで、いわゆる癒し系の音色です。また、その形は女性的な美しいフォルムで、持っているだけでスタイリッシュな印象を与えます。 
 

 コントラバス
   チェロはヴァイオリンを大型化させたヴァイオリン属の楽器であるのに対して、コントラバスはヴィオラ・ダ・ガンバの最低音域楽器である「ヴィオローネ」という楽器が直接の先祖になります。ヴィオローネは16世紀に生まれ、18世紀頃まで用いられていました。

 オーケストラの中ではコントラバスと呼ばれますが、クラシック以外では吹奏楽、ジャズ、カントリー、マンドリンオーケストラ、フォーク等、その存在はかかせないものになっています。名称もダブルベース、ウッドベース、弦バス、ストリングベースと様々な名前で呼ばれています。

 調弦は他の弦楽器は5度ですが、コントラバスの弦は上からG、D、A、E、と四度間隔で調弦されています(ギターの低い方の4本と同じ)。現代ではさらに低いC線を追加した5弦バスもオーケストラでは用いられます。

 弓には2つのタイプがあり、ヴァイオリンと同じように順手で持つフレンチ式(ボッテシーニ式)と、手のひらを上に向けて持つジャーマン式(ドラゴネッティ式)があります。日本ではジャーマン式が一般的です。弓はバイオリン、ヴィオラ、チェロの場合はほとんどが白毛の馬ですが、コントラバスの場合は黒毛や栗毛を用いることもあります。

 コントラバスは、楽譜に書かれているよりも1オクターブ低い音が出ます。音色は弦長が長いため、余韻が長くハーモニックスも大変豊かです。近接した音型や細かく速いパッセージには向いていませんが、ピチカートや長い持続音では豊かで充実した響きが得られ、合奏全体が包まれるような素晴らしい効果が上がります。