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楽隊用語で「落ちる」とは?

 
 打楽器や管楽器では、演奏しているよりも休んでいる方が多いといったような曲がたくさんあります。そのような曲では、休みを数えているうちにどこまで数えたのかわからなくなってしまうことがあります。

 そうなると自分の弾き始めがわからず、出られなくなってしまいますが、このことを楽隊用語で「落ちる」と言います。

 「落ちる」ことはアマチュアならともかく、プロの演奏家には、まず無いようですが、もし「落ちる」ことがあれば、それは致命的なミスにもなりかねないこともあります。

 馴染みの曲なら、長い休みがあってもいちいち数える必要もありませんが、初演の曲だったりするとそうはいきません。基本的には、ずっと数え続ければよいのですが、長い休みだと、数え間違えたり、テンポの揺れについていけずわからなくなってしまうこともあります。

 そこで、「落ちない」ために、長い休みがたくさんある打楽器や管楽器奏者はいろいろな工夫をしています。

 最も原始的で、確実なのは指を折って小節数を数える方法です。これは自分だけにわかるように目立たないようそっとやらなければなりません。練習中ですと折角数えたのに、やっと吹く時になって、その直前で指揮者が止めてしまって、また数えなおし、なんてことがよくありますが、気にしてはいけません。

 また、自分の入る部分の前のところに目立った楽器があれば、楽譜に目印の楽器を記しておき、そこから数えればいいようにしておく。誰かが数えている指を盗み見したりする。近くの奏者とアイコンタクトを取って確認する。・・・それでも分からないときは、近くの奏者の譜面を覗き込む。・・

 メロディのない打楽器パートでは、パート譜ではなくスコアを見ながら演奏を追いかけて行くのは基本です。

 休みの多い曲といえば、例えば、チャイコフスキーの「悲愴」交響曲。約50分もの大曲ですが、シンバル奏者の出番はわずか4発しかありません。第4楽章のドラを加えても5発…。演奏の99%は座っているだけです。一時間の練習中、自分が参加するのはわずか数秒…。

 ドヴォルザークの「新世界」交響曲ではシンバルは全曲中1発だけですから、演奏中に寝てしまって気が付いたら出番が終わってしまったというようなエピソードもあります。