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ホルンの仕組み

 
フレンチ・ホルン
 フレンチ・ホルンはカタツムリのような形状に巻かれた円錐状の管と、3〜5つの、普通はロータリー式のバルブを持っています。へ調と変ロ調の調性を持った楽器があり、それぞれF管(えふかん)、B♭管(べーかん)と呼ばれています。

 その2つの調の管を一つに組み合わせて「切換バルブ」で切り換えられるものがダブル・ホルンとよばれる、ホルンの一般的なものです。

 単一の調性の楽器をシングル・ホルン、2つの調性を持つものをダブル・ホルンと言って区別します。またダブル・ホルンにF管より1オクターブ高いHigh F管(はいえふかん)を追加したトリプル・ホルンと呼ばれるものもあります。


 ホルンの管体は0.3〜0.5mm程度の薄い真鍮で作られています。ホルンの管体部はその真円形状を保つために、高温で溶かした鉛やタール等の充填材を流し込み、曲げ加工の後、その充填材を取り除くような方法で製作されます。

 大量生産の場合には管体に水を通してそのまま凍結し、曲げ加工の後、氷を融かして外に出し、管体を型にはめて内部から圧力をかけることで完全な形に仕上げる工法が取られている場合もあります。

 F管はバルブを押さない時で全長約12フィート(360センチ)、B♭管は約9フィート(270センチ)、High F管は約6フィート(180センチ)です。 管が長いほど音が低くなります。




シングル・ホルンの利点と欠点
利点
 シングル・ホルンは、一つの調の管のみによって作られているホルンです。一般にヘ調または変ロ調の管を用い、それぞれFシングル・ホルン、B♭シングル・ホルンと呼ばれています。

 楽器が軽くて扱いやすいほか、構造が比較的簡単なため価格が安く、特にFシングルのものはナチュラル・ホルンに最も近い音を出すことができます。また、B♭シングルのものは軽い吹奏感が好まれます。

欠点
 Fシングル・ホルンは、音色は良いものの、管が長く高音の倍音間隔が狭いためミスをおこしやすく、操作性があまり良くありません。またB♭シングル・ホルンは、F管に比べて操作性は良いのですが、音色が劣るという欠点があります。

 その両方の利点を組み合わせたダブル・ホルンの誕生が普及すると、シングル・ホルンはあまり使用されなくなっています。




ダブル・ホルン

 ダブル・ホルンは、2種類の調性を切り替えられるようにしたホルンで、その調性はF管とB♭管を組み合わせたダブル・ホルンが一般的です。切り替えの仕方により「セミダブル式」と「フルダブル式」に分かれます。

セミダブル式
 セミダブル式は、高い方の調性の楽器に、低い方の調性を演奏できるようにするための補正管を追加することによって、2つの調性の音を演奏できるように改良したものです。

フルダブル式
 フルダブル式は、それぞれ独立した2つの調性をバルブで切り替えて使用します。セミダブルの場合と違い、一方の調性を使用している時にはもう一方の管は迂回しないようになっているので、低い方の調性の音色がよりシングル・ホルンに近いものになるという長所を持っています。




トリプル・ホルン
 F管とB♭管とHigh-F管をすべて組み合わせたものがトリプル・ホルンです。トリプル・ホルンは高価で、さらに3つの調性の管を組み合わせるために重く、長時間の演奏にはそれなりのトレーニングを要します。しかし、その重さゆえに、音色も独特のボリューム感のあるものとなるなどの欠点があります。




ウィンナ・ホルン
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団では、ウィンナ・ホルンと呼ばれる伝統的なF管シングル・ホルンを原則として使用しています。

 これは、ウィンナ・バルブと呼ばれる特殊な旧式のバルブを備えています。19世紀中頃から構造や形状が進化していないので、一種の古楽器といえます。

 音色は暗く重く、より自然ホルンに近、フォルテで音が楽に割れやすく、物理的な音量をあまり上げずにフォルテッシモのような響きを作ることができます。

 このため声を覆い隠さないオペラの伴奏に適していますが、Fシングル・ホルンであるため高音の倍音間隔が狭く、ミスを起こしやすいという欠点があります。