エンドピンとはチェロやコントラバスのような大型の楽器を演奏するとき、床に突き立てて楽器を支える金属製の棒のことです。演奏者の身長などに合わせて伸び縮みができ、エンドピンの全体を楽器の内部に収納できるようになっています。
エンドピンは楽器を支えるという目的のほか、音の振動を床に伝えて響きを増幅させるという効果があります。ということは、エンドピンを刺す床(演奏する場所やステージ)は、響きを左右する重要なファクターということになります。中でもチェリストにとってベストの床材は「木」だそうです。木の床は楽器と一緒に共鳴するので、弾いていて気持ちがよいといわれます。特にエンドピンゴムをはずして床に直に突刺して弾いてみると驚くほど音が変わるのがわかるそうです。このように、チェロの響きが、エンドピンから床をつたって聴き手に響くという一例として、「一度、耳の不自由な子どもたちが通う学校で弾いたことがあるんです。そこの先生が、子どもたちの耳からは聞こえないけれど、振動で音が伝わりますから、と教えてくださいました。ヴァイオリンでは伝わりにくいけど、チェロやコントラバスの音は、エンドピンから床に通じた振動で、彼らに届くそうです。」【オーケストラが好きになる辞典(緒方英子著)より】
普通はエンドピンの先には滑り止めや、床に傷をつけないためにゴム製のキャップを装着したり、ストッパー等を用いて使用しますが、この場合は床に振動を伝えることで得られる響きは減少するようです。エンドピンを用いる弦楽器としてはチェロ、コントラバスの他に、マンドローネ、ギタロンなどが、木管楽器ではコントラファゴット、バスクラリネットがあります。チェロ奏者のポール・トルトゥリエは途中で曲がった「トルトゥリエ・エンドピン」を発明しました。これを用いると、チェロを通常よりも水平に傾けて演奏することができるそうです。日本では普及していませんが、著名なチェリストのロストロポービッチが使っていたのを見たことがあります。
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