ある巨匠といわれる老齢のピアニストが、ステージに出る前は毎回緊張で足がガタガタ震え、二度と演奏はしたくないという恐怖にかられると言っていたことを聞いたことがあります。何百回もステージに立ってきた演奏家でさえ大勢の聴衆の前で演奏するのは緊張を強いられることのようです。巨匠でさえそうですから、ましてステージ経験の少ない音楽家や、アマチュアの演奏者にとって、ステージで緊張することはあたりまえのことでしょう。
「あがる」原因は、緊張すると不安や恐怖が脳に伝わりノルアドレナリンという物質が分泌され、心拍数や体温、血圧が上昇して「あがり」を引き起こします。その緊張を和らげて不安と恐怖を取り除き「あがらない」ようにするのにはどんな方法があるのでしょうか。
中には殆どあがらないという人もおり、それぞれの性格の差があると思いますが、ステージで演奏する場合は、最大の原因は練習不足ではないかということになります。その緊張のほとんどが、間違いなく演奏できるだろうか、失敗はしないだろうかという不安がその要因と考えられます。
それには練習を充分することで解消されてくると思われます。自分が過去に最高にうまくいった時のことを思い出し自信をつけること。必死に練習して自信をもって演奏に臨むようにすることです。それでも不安になったら、「充分練習したのだから、大丈夫!」と自分に言い聞かせます。
演奏がうまくいった、成功した姿を、強く思い浮かべるようにします。心の奥で「あがるのではないか?失敗するのではないか?」と思っていると、その通りになってしまいますので、そういう考えが起こらないように、しっかりと成功したイメージを心に植え付けるのがいいようです。
さらにステージにあがってからは、ステージから客席を見下ろして、お客さんの顔までしみじみと眺めないようにします。お客様はみなカボチャと思って、絶対視線など合わせないようにします。客席は後ろの方、遠くの方をぼんやり見るのがいいようです。
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