吹奏楽は様々なキー(調)の楽器で構成されています。そして同じ楽器でも、キーと高さが異なる楽器が混在しています。管楽器では、同じような構造を持ち、管の長さのが違う楽器がありますが、それらは同じ指使いで違う高さの音を出します。また、それらは演奏法もよく似ているために、ひとりの奏者が持ち替えで演奏することができます。
このような場合、音の高さが楽器によって違っても、同じ指使いには同じ音符をあてるほうが、奏者の負担を少ないために、楽譜をそれぞれの楽器の指使いのまま、楽譜を書くときに高さを調整(移調)して書き表すようにしたのが移調楽器とよばれるものです。
たとえば、イングリッシュホルン(コールアングレ)はオーボエとよく似た楽器で、オーボエ奏者が持ち替えて演奏しますが、オーボエのハ(C、ド)の指使いで音を鳴らすと、ピアノのヘ(F、ファ)の音が出ます。それならば、この音はハ(C、ド)で楽譜を書いた方が、奏者は演奏しやすいということになります。そのために、イングリッシュホルンは、ヘ(F、ファ)の音をハ(C、ド)として扱います。イングリッシュホルンのように楽譜上のハ(C、ド)の音が、ピアノのヘ(F、ファ)の音に一致する楽器を、へ調の楽器(F調の楽器、F管)と呼びます。
移調楽器の含まれる楽譜を書くためには、それぞれの楽器の調性に合わせて楽譜を作る必要があります。たとえば、イングリッシュホルン(F管)ならば、完全5度低い音が出ますので、完全5度上げて書く必要があります。
このようなとき、その楽器の楽譜で読みやすいように、調号も付け替えるのが普通です。例えば、ハ長調の曲をイングリッシュホルンのために書くのであれば、その曲は完全5度上げてト長調で(♯1つ)で記譜します。
近・現代音楽の中で特に無調や調性の曖昧な音楽を作曲する場合は、そのスコアはすべてin Cで書くことも多くあります。スコアにはin C、パート譜には移調譜で書く例も珍しくはありません。一方で、スコアも移調譜で書くことにこだわる作曲家もいます。
|